皆さんの家の屋根がもし銅板と瓦屋根の組み合わせであった場合には注意が必要です。
銅板と瓦の組み合わせに注意!
銅板と瓦屋根の組み合わせ例
- 瓦屋根に銅板腰葺き屋根
- 2階が瓦屋根で1階が銅板屋根(上が瓦、下屋根が銅板)
- 瓦屋根に銅板谷樋の屋根
- 瓦屋根に銅板製雨樋
このいずれかの場合には銅板の(化学的)腐食による穴あきが起きている可能性があります。
この記事では最近の2件の事例を元に銅板の(化学的腐食)による穴あきとは何なのか、またその修理方法について言及したいと思います。
まずはこちら。瓦屋根に銅板腰葺き屋根、銅板谷樋、1階銅板下屋根、銅板製雨樋と上の条件がフルセットになっている家ですが実は結構多く見られます。
雨漏りの原因は銅板谷樋にあいた穴!
この組み合わせ(瓦と銅板)の家で最も多い雨漏りの原因はこれです。
銅板の谷板金(谷樋)に注目してください。何か模様の様なものが見えますね?
よく見るとそれは瓦を伝って雨水が落ちてくる部分にあることに気づくと思います。
実はそれ、銅板が腐食して薄くなっている部分です。
そしてついにはこの様に穴が開いてしまうのです。谷樋は屋根で雨水が一番多く集まるところですからこうなると室内は雨漏りでもう大変な状態になってしまいます。
銅板に穴があく原因は?
銅板に穴があく原因はこれまで様々言われてきました。色々な要因と私の経験上の考察をまとめてみると・・・
- 酸性雨
これは昔から言われていますが穴が空くほどになるのは瓦に接した銅板部分あるいは上流に瓦がある銅板部分に限定され、全面を銅板で葺いたお寺などの屋根では緑青の状態で安定することから直接的な原因ではないと思っています。 - エロージョン・コロージョン
直訳すると磨耗的腐食ということになりますが、雨水が瓦から落差をもって銅板に当たることで形成された酸化被膜(緑青)が剥離され、露出した素地の銅が酸素と結合することで腐食が加速するという話です。もちろん有効な説だと思いますが、先述の銅板のみの屋根の時にも同じように落差をもって当たる部位(雨樋など)がありますが、この場合穴が空かないことを経験的に知っているので不思議に感じます。
- 電食(電蝕)
異種金属が接している時、水分が電解液としてはたらき、局部電池が形成されることで起こる電気化学的腐食のことです。瓦の釉薬に含まれる金属が雨水中に流れ出し銅板との間で電蝕が起こる場合、銅は貴な金属(イオン化傾向が小さい)なので腐食されるのは相手の金属のはずですが常にそれが付着していれば所謂『もらい錆』を受けてしまうということではないかなと思っています。
(もしより深い興味を持たれた方がいらっしゃれば「隙間腐食」や「迷走電流腐食」などのキーワードでも検索してみてください。中々に深い世界ですよ。)
今の所私個人の考えとしては3の電食と2のエロージョン・コロージョンが同時に作用しあって加速度的な銅の腐食を起こしているのではないかというところに落ち着いています。
穴が空いた銅板谷樋の入れ替え(カバー)工事は施工者を選ぶ雨漏り修理工事の一つ
そもそも雨漏り修理は難しいものでありそのやり方も様々です。屋根の専門家以外の人にやらせたらコーキングをして終わりだったり、酷い場合には防水テープを貼っただけで10万円請求されたというお話も伺ったことがあります。
銅板は伸び縮みが激しいのでひと夏(良くて1年位)でコーキングは切れてしまいます。防水テープも紫外線や風雨に曝される屋根上でいったいどれくらいもつでしょうか?
ではここから雨仕舞のスペシャリスト吉沢板金の行う雨漏り修理の様子をご覧いただきます。
穴の空いた銅板谷樋(谷板金)に対する雨漏り改善工事はステンレス鋼板製谷樋への入れ替え(カバー)工事がベストです。
それには瓦屋根の一部一時解体復旧と既存の谷とその屋根の形状に合わせた新しい谷板金の加工技術、新築時は谷の施工が先なのに対して瓦がある状態で行われる高い施工技術を要します。
つまりこの工事には瓦にも板金にも精通し、新築だけでなくリフォームや修理のノウハウに長けた技術者が求められるということです。
アフター。
瓦の一時解体から始まり、銅板谷樋に絶縁が主目的の防水紙を施工、ステンレス製の谷板金を施工し、瓦を復旧します。
瓦を捲っている状態で雨に降られてしまっては室内に雨漏りさせてしまいますので、当日に工事を完了させなければなりません。当然、加工や事前の工事設計を誤ってはいけない難易度の高い工事ですがこの様に仕上がればお客様にはコーキングでは得られない安心と満足を感じていただけるのではないでしょうか。
今回は雨漏りの原因であり足場無しでも工事ができた谷樋の工事に限定しましたが、腰葺き部分の銅板屋根もステンレス屋根に葺き替えることができます。ご予算によっては瓦と接している一番上の部分のみ葺き替えるということもできますのでお困りの方はご相談いただければと思います。
【関連記事】施工者を選ぶ雨漏り修理
穴が空いた銅板製雨樋をそのままにしていると屋根に穴が空いてしまう
次の例は瓦屋根に銅板製雨樋、下屋根(庇)が銅板屋根という仕様のこちらのお宅・・・
雨樋から雨漏りする理由は勾配不良や縦樋の詰まり、部品の破損等ありますがこれは誰が見ても分かるでしょう・・・・そう、軒樋に穴が空いてしまっています。(光が漏れていますね?)
上からはこんな風に見えています。現象としては先の例と同じですが、雨樋は屋根の外側にあるものだし極論ではありますが「気にしなければこのままでもいいのでは?」と思っている方いらっしゃいませんか?
雨樋に空いた穴をそのまま放っておくと屋内に雨漏りしてしまいますよ。
例えばこんな条件です。穴のあいた銅板雨樋の下に銅板屋根がある場合・・・・どうですか?こちらはぎりぎり穴こそ空いていませんが雨樋の穴から漏れた雨水が当たる部分(銅板屋根)が腐食して薄くなっているのがお分かりいただけるのではないでしょうか。
銅板屋根に穴が空けばその下は室内です。即、雨漏りということですね。
穴が空いた銅板製雨樋のリフォーム
銅板製雨樋に穴が空いてしまった場合リフォームメニューとしては
- 新しい銅板製雨樋に架け替える
- ステンレス製雨樋に架け替える
- 樹脂製雨樋に架け替える
- 樹脂被膜のアイアン雨樋に架け替える(パナソニック・アイアン丸)
- 銅芯材に透明特殊塗装を施した雨樋に架け替える(タニタ・スーパー銅雨樋)
- ステンレス芯材に銅被膜をした雨樋に架け替える(タニタ・SusCuサスク)
等があります。
1はまた穴が空く心配があります。
2は例えば屋根でしたらこれがベストだと思うのですが他にも素材が選べる雨樋だった場合はどうでしょうか・・・化学的な腐食の心配がない素材が選べるとしたらということで3の樹脂雨樋が出てきますが、これは耐候性が弱く熱で曲がってしまったり割れてしまったりという弱点があります。
そこで吉沢板金がコストパフォーマンスの面で一番良いのではないのかとお勧めしているのが4のアイアン芯材に樹脂被膜タイプの雨樋です。
芯材にアイアンを使うことで樹脂の弱点をカバーし、逆にアイアンの錆るという弱点を樹脂被膜がカバーするというものになっています。
電食などの点から見ても理にかなっていますよね。
こちらのお宅でもアイアン丸を掛けさせていただきましたが艶消しの落ち着いた質感で雰囲気は損なわれていないのではないかと思います。
5、6は価格が高くなってしまいますがどうしても銅板の見た目じゃないと嫌だという方にはお勧めです。拘った数寄屋造りであったり神社仏閣にはこれらが合うでしょう。
アフター。もし気づくのが遅くなってしまって下屋の銅板に穴が空いてしまったという場合(雨漏りするようになってから気づいた場合)でもそれを改修することは可能ですのでお悩みの方は是非ご相談ください。